
はじめに
身内や同居している人が死亡した場合、「死亡の届出」をしなければならないことが法律で決められています。
お医者さんによって人の死亡が確認された上で、特におかしなところ(他殺の可能性など)が一切なければ、「死亡診断書」が交付されます。
この死亡診断書は、「死亡届」と一緒になっているA3の用紙(PDFファイル)です。
まずはじめに、「自然死における死亡の届出」から見ていきましょう。
後半では、「自然死以外のケースにおける死亡の届出」について触れます。
参考になる動画
先に全体のイメージをつかみたい方は、下の動画をご覧ください。
死亡届と死亡診断書(死体検案書)が一緒になったPDFファイル
「死亡届の提出」は、届出義務を負っている人が届出用紙に必要な事項を書いて、所定の提出先へ期限内に出すという「公的な行為」です。
やりたくない場合はやらなくていいなどという性格のものでは決してありません。
根拠となる法律は、「戸籍法86条〜88条」です。
この記事では、これらの条文の内容を、かみ砕いて解説していきます。
死亡届の書き方

死亡届の書き方に詳しいという方は、まずいないでしょう。日常的に書くものではないですからね。
このことを考慮してか、戸籍事務を処理する「市区町村」に対して助言・勧告・指示等を行っている「国(法務省)」が、死亡届の書き方の要領・例をインターネット上に公開しています。
重要 死亡届の書き方の要領・例はこちら注意しなければならないのは、上記の要領・例は1つの事例にすぎないということです。
ほとんどの内容は、上記の要領で例を参照しながら書けば大丈夫でしょう。
しかし、「ケースによっては死亡診断書(死体検案書)の交付の流れが違う」ということを覚えておいてください。
死亡届の届出義務がある人・代理で届出ができる人
死亡届の提出手続の対象者には、2タイプの人がいます。具体的には以下のとおりです。
タイプ①:届出の「義務」がある人
まず1つめのタイプが、法律上「届出をしなければいけない人」です。このタイプは、下記のとおり三者います。
- 同居の親族
- その他の同居者
- 家主・地主または家屋もしくは土地の管理人
なお、原則として上記の三者には優先関係があります。
具体的にいうと「数字が小さい者」が優先されることになっています。
たとえば同居の親族と家主がいるケースでは、同居の親族の届出義務の方が優先されるということです。
ただし、死亡にともなう手続きや葬儀などで忙しいことを考慮して、例外的に「順序にかかわらず届出ができる」と規定されています。
タイプ②:「代理」で届出ができる人
2つめのタイプが、「代理して届出ができる人」です。このタイプは、下記のとおり五者います。
- 同居の親族以外の親族
- 後見人
- 保佐人
- 補助人
- 任意後見人
おそらく2〜5に関しては、聞いたことが無いのではないでしょうか?
それも無理はありません。これらの人たちは、法律上の制度によって代理権が認められており、一般的には馴染みが無いのが普通だからです。
ここでは深く掘り下げませんが、「判断力が低下している人を保護する人」という認識で問題ありません。
なお、葬儀社でも届出を代行してくれますので、選択肢の1つに入れておくといいでしょう。
死亡届の提出先

死亡届は、故人の死亡地・本籍地または届出人の所在地の市役所・区役所もしくは町村役場の戸籍係に、死亡診断書または死体検案書1通を添付して提出します。
添付(てんぷ)といっても、この記事の最初にいったとおり「死亡届」と「死亡診断書(死体検案書)」は、A3の用紙に見開きで一体となっています。
なので、提出する用紙の枚数は1枚です。なお、提出に際してお金は一切かかりません。
死亡届の提出期限
死亡の届出は、「死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡したときは,その事実を知った日から3か月以内)」にしなければいけません。
ただ実際は、死亡届を提出して初めて「火葬(埋葬)許可証」が交付されるので、1日でも早く届け出るに越したことはありません。
一刻も早く提出するようにしましょう。
「自然死における死亡の届出」の解説は、ここまでとなります。
事故死・変死・自殺のケース

ここからは「自然死以外のケースにおける死亡の届出」について解説していきます。
事故死や変死または自殺のケースでは、「死体検案書」の交付の前に、警察医によって検案(けんあん=死因等の総合的判断)・検視(けんし=犯罪性の有無を明らかにする刑事手続)が行われます。
死体検案書は死亡診断書と兼用になっているので、交付されたあとの手続は、ここまで解説してきた「自然死における死亡の届出」と同じです。
なお検視を行った結果、解剖(かいぼう)が必要と判断された場合、遺族が望もうが望まなかろうが「行政解剖(=犯罪性のない死体の死因を明らかにするための解剖)」が行われます。
現場で即死したケース
事故死・変死・自殺の3つに共通する事項として、現場で即死したケースでは、「絶対に死体検案書が必要になること」が挙げられます。
病院に運ばれたあとに死亡したケース
一方、即死ではなく病院に運ばれたあとに死亡したケースでは、「自然死と同じ扱い」になり、死因に不審点がなければ、死亡を確認したお医者さんから「死亡診断書」を交付してもらえます。
居住地以外で死亡したケース
旅先や出張先で事故・事件などに巻きこまれ死亡に至ったようなケースでは、「遺体を居住地まで運んでから葬儀を行うこと」があります。
しかし、遺体の状態によっては、それが現実的ではないこともあるでしょう。
そういう場合は、「現地で火葬を行い、遺骨となった状態で居住地へ持ち帰ること」もあります。
ちなみに、現地で行う火葬のことを「密葬(みっそう)」・居住地における葬儀のことを「本葬(ほんそう)」といいます。
遺体が見つからないケース
海や山での遭難など「遺体が見つからないケース」では、いったん密葬を営み、遺体がご遺族の元に戻ってきてから、あらためて本葬を営むこともあります。
遠隔地(=遠く離れた場所)で死亡したケース
「遠隔地(=遠く離れた場所)で死亡したケース」では、手続が複雑になることが通常なので、1人で現地に向かうのは止めたほうがいいでしょう。
また、移動代はもちろん現地の病院や葬儀社への支払いなど、多くの費用がかかります。現金は多めに準備しておきましょう。
死因によっては、上記の費用のほかに「捜査費用」や「遺体の収容費」がかかることもあり得ます。
故人が生前に臓器等を提供する意思表示をしていたケース

故人が生前に臓器等を提供する意思表示をしていた場合、遺言などで指定された病院に連絡すると、病院から「遺体を引き取るための車」が手配されます。
このケースでは医学の進歩のために遺体が解剖されるため、ご遺族の元へ遺骨となって戻ってくるまでには時間がかかります。
おおよそ「半年〜1年後に戻ってくる」と認識しておきましょう。
なお、その間の費用は全て病院が負担するため、金銭面において「臓器等を提供する意思表示をしていないケース」との違いはありません。
最後に
繰り返しになりますが、これらの手続きは一刻も早くする必要があります。
さらに付け加えると、故人の死にともなう手続・届出・雑務は、死亡届の提出以降の方が多いです。
悲しみで気持ちが落ち込んでいる状態の中で、やらなければいけないことが多くて大変だとは思いますが、優先順位をつけて一つ一つ対応していってくださいね。
この記事が、あなたの「心の余裕」に少しでも役立てたとしたら、執筆者として嬉しい限りです。
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