
小さい都市では、普段から「菩提寺(ぼだいじ=先祖代々のお墓をおさめている寺)」と付き合っていることが多く、また、町内会の付き合いも活発なことから、葬儀の段取りも比較的スムーズに決めやすいといえます。
しかし大都市では、そう簡単に行かないのが実際のところ。
大都市では、葬儀の段取りは「葬儀社にお願いするのが普通」です。
ただ、注意しなければいけないのは、葬儀社は知り合いでもなければ毎年顔を合わせるようなところでもないので知識がなく、どうすればいいか迷ってしまうということ。
そこで、この記事では「社会人が押さえるべき葬儀社選びの基礎知識(※仏式に限る)」について解説します。
いざという時にバタバタしたくない方は、わずかな時間お付き合いください。
葬儀社の種類は大きく分けて3タイプ
まずはじめに葬儀社の大まかな分類について知っておきましょう。
「葬儀社の種類」は、以下の3タイプに分けることができます。
タイプ1:檀家と付き合いがある葬儀社
「檀家(だんか)」というのは、特定のお寺に属して、そのお寺を「お布施(おふせ=僧侶に謝礼金を渡すこと)」によって経済的に助ける家のことを指します。
「檀家と付き合いがある葬儀社」は、直接の打ち合わせを何度も重ねることができ、車の手配などが便利なのが特徴です。
タイプ2:冠婚葬祭互助会
「冠婚葬祭互助会(かんこんそうさいごじょかい)」というのは、加入者が毎月数千円を前払い金として積み立てることで、必要に応じて冠婚葬祭の儀式に関するサービスが受けられるという仕組みです。
満期になればいつでも葬儀を行ってもらえるのはもちろん、積立ての途中でも「現時点の前払い金+差額」を払えばサービスを受けられるので、満期になる前に不幸があったとしても、払ったお金がムダにならないのが特徴です。
検討をする際は、信頼性の観点から「経済産業省認可業者かどうか」を確認するといいでしょう。
タイプ3:葬祭業協同組合加盟店
「葬祭業協同組合加盟店(そうさいぎょうきょうどうくみあいかめいてん)」は、同じ地域の業者からなる協同組合(=非営利でお互いに助け合う組織)で、「標準となる価格」が決められているのが特徴です。
業者によっては分割払いに対応していたり、ごく普通の家庭が利用しやすいように工夫されています。
葬儀社への具体的な頼み方

つづいて「葬儀社への頼み方」について見ていきましょう。
葬儀社にお願いする場合、担当の方と打ち合わせをしなければいけません。
打ち合わせの際には、「葬儀の宗旨(しゅうし=宗教の流派)」・「予算」・「日時」・「場所」を説明し、担当の方から、それに対するアドバイスをもらいます。
このときの注意点として、「先方が1人で来られたとしても、頼む側は1人である必要はない」ということがあります。
1人で葬儀に関することを抱え込むと負担が大きいので、身内(親族など)の誰かに打ち合わせに加わってもらいましょう。
その方が、独断で決めるより不満が出にくいです。
打ち合わせの内容
担当者の方がきたら、はじめにハッキリと伝えなければいけないことがあります。それは何だと思いますか?
答えは…「葬儀の予算」です。
故人との最後のお別れですから、盛大に儀式を執り行いたい気持ちはわかります。
でも、あまりにお金を掛けてしまうと「生活が苦しい…(泣)」なんてことになってしまいかねません。
遺族が苦しんでいる姿を、故人が喜ぶと思いますか?そんなことは無いはずです。
身の丈に合わないお金を掛けるより、「気持ちのこもった葬儀にすること」を優先しましょう。
具体的には必ず見積書をもらい、必要の無いものはセットに含まないよう打ち合わせておきます。
セット料金に含まれるものと別料金になるものは必ず確認し、親族の意見を取りいれながら1つずつ決めていってください。
葬儀社に依頼できること

昔の葬儀社というと「棺(ひつぎ)を式場に持ってきて祭壇(さいだん)を作る」のがメインでしたが、最近では葬儀に関する幅広いサービスを提供してくれるのが普通です。
とはいってもサービスの一つ一つに単価があるのは珍しく、「〇〇葬・〇〇プラン」のような名称でセット料金になっているケースがほとんどです。
一般的な葬儀のセット料金に含まれているものとして、以下の8つを挙げることができます。
- 死亡届〜火葬場までの諸手続きの代行
- 忌中札(きちゅうふだ=死者が出た家であることを示す玄関に貼る紙)・案内看板・記録帳の用意
- 棺および棺に関する用品の手配
- 祭壇の組み立て・飾り付け
- 司会者の手配
- 焼香(しょうこう)の道具一式のレンタル
- 霊柩車(れいきゅうしゃ)の手配
- 骨壷(こつつぼ)の用意
また、この他に「オプションとして別料金でやってくれること」があります。具体的には次のとおりです。
オプションとして別料金でやってくれること
- 死亡通知状・会葬礼状の手配
- 事務に使う小物(受付用紙・寸志袋など)の用意
- 手荷物を預かる棚の用意
- 祭壇用の供物(くもつ)の手配
- 生花・花輪の手配
- 遺体に当てるドライアイスの手配
- 喪章(もしょう)・貸衣装の手配
- 写真撮影の手配
- 葬儀に際して使う備品(座布団・コップ・灰皿など)のレンタル
- 食事・菓子・飲み物の手配
- 引き出物の手配
- 仏具・墓地の紹介
- 相続に関する法律家の紹介
これらは葬儀社に頼めば別料金でやってくれるのですが、一般的にオプションは葬儀の規模に合わせて選べるよう、等級が分かれています。
「ここはこうしたい」といった要望を踏まえ、かつ財布と相談しながら依頼する内容を決めていくといいでしょう。
いずれにしても葬儀社はたくさんあるので、柔軟に対応してくれるところを選びたいものです。
公営葬を利用するという選択肢

「公営葬(こうえいそう)」というのは、市や区などの自治体が主体となって運営している葬儀斎場を利用して行う葬儀のことです。
公営の葬儀斎場は、民間の葬儀斎場より使用料が安いため、葬儀費用をできるだけ安くしたい場合は、選択肢に入れるといいでしょう。
問い合わせ先は、市区町村の役所または役場です。
すべての市区町村に公営葬の制度があるわけではないですが、制度がある自治体では、手続きをすれば公営葬の手配をしてくれます。
公営の葬儀斎場の特徴
公営の葬儀斎場の最大の特徴は、「民間の葬儀斎場より使用料が安いこと」です。
また、葬儀会場と火葬場が近いことが多く、葬儀会場から火葬場への移動時間が短いというメリットがあります。
反対に、デメリットとして都市の中心部などの利便性が高いところではなく、郊外などの不便な立地に設置されている傾向があります。
さらにいうと、使用料の安さから利用希望者が多いため、必ずしも希望通りの日程を取れるか分からないので、注意が必要です。
なお、自治体によっては「その自治体に住んでいること」が利用条件になっている場合がありますので、公営葬を検討する際は、事前に利用条件・手続き・葬儀斎場の立地を確認しておくことをオススメします。
公営葬を利用する際の手続き・料金について
手続きの流れ
公営葬を利用する際の手続きは、一般的に次の6ステップです。
- 死亡を確認したお医者さんから、死亡届と見開きで一体となった死亡診断書(A3サイズ)を受け取る
- 死亡届に必要事項を書いて押印する(認印でOK)
- 死亡届と死亡診断書が一体となった用紙1枚を、故人の死亡地・本籍地または届出人の所在地の市役所・区役所もしくは町村役場の戸籍係に提出する
- 火葬(または埋葬)許可証を受け取る→このタイミングで「公営葬を希望します」と伝える
- 市民(区民)葬儀券が発行される
- 自治体が指定する葬儀社に依頼する
料金の内訳
公営葬の料金の内訳は、一般的に「①棺・②祭壇・③骨壷・④霊柩車」だけとなっています。
供花・供物の料金は別にかかることを覚えておきましょう。
また、民間の葬儀社に依頼する場合と違い、司会者を手配してくれるわけではないので注意が必要です。
公営葬に準じた葬儀
喪家(そうか=不幸があった家)が生活保護を受けている場合、自治体の福祉課(福祉事務所)・保護課に申し出て認められると、生活保護法18条による「葬祭扶助(そうさいふじょ)」を受けられます。
葬祭扶助の内容は公営葬に準じているためシンプルな葬儀ではありますが、経済的に苦しい人でも葬儀を行う道は用意されているということになります。
まとめ
いかがでしたか?
「葬儀社の選び方」は、学生時代はもちろん社会人になってからも教わる機会がないので、はじめて知ることもあったと思います。
でもそれが普通なので、何も恥じることはありませんよ^^
この記事を読んだことで、あなたは「葬儀社を選ぶに際しての基礎知識」を習得したはずです。
いざ自分が葬儀を取り仕切る立場になったときは、ここで学んだことを活かして行動すれば、バタバタと慌てないで済むでしょう。
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